ふうてんの繁




ふうてんの繁

第1章誕生
大正14年横浜で生まれる。父清松、母とよのもと、4男として
生まれる名前を繁とつける。印刷工場のおぼちゃんのはずだが、少し前の
関東大震災ですべて失っていた。やがて兄、父死去。小学校では
そっと抜け出し、ほんちという蜘蛛ばっかりとっていた。当時、ほんちをとって
戦わせる遊びが流行っていた。
「あんちゃん。めまいがする」
繁は脳膜炎を患う。
「繁大丈夫か」
「頭がぐるぐるするよう」
しかし奇跡的に症状が治まる。
繁は兄の恒一に比べて相当頭が悪かった。兄は天才か小学校でも級長をやり
漢文をそらんじていた。
「あんちゃんは頭いいね」
「関東大震災がなかったら東大いってたよね」
「俺たちは本当、運がないね」

第2章就職
繁は小学校を出ると東京機械の旋盤工に就職。2人の兄は戦争へ駆り出される。
旋盤工の機械の油は体にしみ、脂汗となる。その手で顔を拭くから顔は
真っ黒だ。

第3章兄貴帰国
「おー、繁、帰ったよう」
「あんちゃん、よく帰ってきたね」
「あんなとこ行くもんじゃないよ」
母とよも泣き崩れていた。😅
「そんな戦地はひどかたかったか」
「弱い者いじめだよ。もうまっぴらだ」
「繁といっぱい飲みたいよ」
その日は1升ビンあけた。
「あんちゃんは酒強いね」
「肝臓やられたよ」
「そうか」
「体だけはきをつけなよ」
「かあちゃんわかったよ」
戦争の話は兄はせず、寝た。😇

第4章炭鉱
「繁、炭鉱に行かないか。いい金になるんだよ」
「やめなよ、そんな危険なところ」
母はもう苦労はしたくないことはありありとわかった。
「あんちゃん、かあちゃんがやめろとよ」
「このままじゃいいことないぞ」
兄昇は体が筋肉隆々としていた。
それもそのはず、ボクシングをやっていたのだ。100キロは
簡単に持ち上げた。

第5章炭鉱へ
渋々、母と昇と繁は筑豊に行くことにした。
「あんたらはしょうもないね」
「母ちゃん金が大事だよ」
「アンちゃんは金儲けがすきだよね」
「金がすべてだよ」
横浜から蒸気機関車で30時間、機関車の煙は乗客の体を真っ黒にした。
「しゅしゅ」と機関車は悠然と走っていく。
「おおさか、おおさか」
「やっと大坂かよ」
出発から10時間、しかし、列車で食べる弁当屋の飯は何とも言えない
楽しさがあった。

第8章筑豊
福岡に3人は到着、暑いな夏、8月の筑豊は暑く、しかも居心地Iいいところでは
なかった。人々はどかんにすみ、その日暮らしをする労働者ばかりであった。
炭鉱にはいると、地獄のような穴の中は今にも崩れそうな予感がした。
「ギシギシ」
「アンちゃん変な音がするな」
「繁これは崩落するぞ」
半年がたち、繁たちは横浜に帰ることにした。😃

第9章赤紙
繁19歳、郵便が届く。
「おめでとうございます」
「どうも」
母、とよ泣き崩れる。
とうとう繁にも赤紙が来た。
「なに」
繁も目に涙いっぱいだ。
このまちで赤紙が来て、母が息子を隠し、逮捕されたことがあった。
繁は立派に兵隊になり、出征していった。
「母ちゃん言ってくる」
「むりすんなよ、生きて帰って来いよ」
「あいよ」
繁は広島の陸軍へ行くことになった。

第10章戦闘訓練
広島の陸軍第2師団に2等兵として入隊した。繁は偵察、望遠鏡で敵を監視する役目だ。
「いちに、いちに」訓練は厳しい。昼休みに入ろうとしている。
今日の飯は魚とコウリャンだ。口のなかでぼろぼろしたつぶが踊っている。
味などない。
「あれ、なんだこりゃ」
繁のみたものはハエの頭だった。はえが飛びそこなって包丁で真っ二つになっていた。
みな、ミイラのように痩せてしまっている。😅

第11章悲惨な兵隊さん
「ばーん、ころ、ばーん、ころ」
小さく弱そうな兵隊さんが悪そうな人相の上官になぐられている。
見るも無残、ヘルメットをなくしたみたいだ。だれかのいじめだ。
10回ほど殴られ、顔話はれ上がりまっかだ。
「ひでーことしやがるな」
繁がつぶやく。

第12章大変だ
「軍曹、えらいことになった」
繁は血相を変えて、軍曹にひそひそとはなす。
なんと繁のヘルメットがないのだ、だれかが隠したのだろう。😥😥
軍曹はなんとかヘルメットを工面してくれた。
「すみません」
繁は命拾いした。

第13章前線へ
繁はチフスにかかった。毎日、下痢と嘔吐がひどく、
鏡を見たら、髪が茶色になってしまった、トイレまで這って行った。
3か月が過ぎ、繁は回復した、すでに自分部隊は前線に行った。
そして二度と帰ってくることはなかった😅

第14章手旗信号
「いち、に、さん」
「よし、つぎ」
手旗信号の練習だ。
遠くからでも手旗で言葉を伝える方法だ。
繁は苦手だった。
「よし、今から言うことを手旗信号にできたものから昼飯だ」
「よし、いっていいぞ」
次から次へと飯に行く。
10分がたったが繁はできなかった
「ちくしょうめ」
繁は泣きべそをかいていた。
「もういいや」
繁は解放された。😅👅😡

第15章チフス
繁は体調を壊した、腸チフスだ、下痢と嘔吐が止まらない。
トイレまで這って行った。そして2か月、鏡を見てびっくり、
髪は茶色になっていた。死と巻き合わせた3か月、やっと復帰、
部隊は戦場に行っていた。😆

第16章戦争
戦争は激化した。南方へ行った我が部隊は誰も帰ってこなかった。
全滅したようだ。
ある日であった。西の方角でキノコ雲が見えた。広島に原爆が落ちた。原爆が落ちた
ほうから逃げてきた兵隊がいた。
繁は看護した。
「大丈夫か」
「終わった」
「え」
「戦争が」
「おれたちどうなるんだ」
目の前は真っ暗になり、茫然とした。
2人とも死を覚悟した。😅

第12章終戦
看病をしながら、玉音放送がながれた。
戦争は終わったのだ。それも敗戦だ。
日本は今まで連勝連戦の無敗。
地球を征服するような勢いであった。
ゼロ戦、戦艦など世界を恐怖に陥れていた
日本だが、日本は降伏したのだ。
もうこれ以上戦うことは世界が滅亡すると
天皇は考えたのでしょう。
日本の技術は世界1であることは間違いない。日本人の能力は今後もずっと栄えることは間違いない。戦力、医学、技術は日本人の持って生まれた才能なのだ。ここでいったん終止符を打った英知は地球を新しくするチャンスであるように、
知識人たちは思うでしょう。😅

第13章退役
繁は軍隊を退役し母兄の元へ戻る。
母たちは横浜に戻り、兄は沖仲仕をやっていた、沖仲仕は、狭義には船から陸への荷揚げ荷下ろしを、広義には陸から船への積み込みを含む荷役を行う港湾労働者の旧称とんどは在来型貨物船であり、荷揚げ荷下ろしの作業は本船から、艀から桟橋と荷物を移動させるために、多くの作業員を要する仕事であった。港湾荷役事業は元請けの下に複数の下請けがあり第三次、第四次の下請けが現場作業を担当した。体力のない下請けは作業員の雇用維持が出来ず、手配師と呼ばれるコーディネーターに人集めを依頼する形態が常態化した。高賃金で体力勝負となる労働現場は荒くれ者が集まることから荒廃しやすかった

「母ちゃん帰った」
「よく帰ったね」
「繁、ご苦労」
「Ⅰっ杯飲むか」
「よくもどったな」

「だな」
「戦友はみな死んだみたいだ」
「おまえは運のいい子だよ」
「どうするか」
繁は手が器用だから大工がいいと思っていた。

第14章疎開
繁は当分、田舎へ疎開することになった。
石川県小松市農家だ。
一人農業で暮らしている叔父繁太郎のもとへ行くことにした。
「かあちゃん農業でもやるかな」
「そうしな」
「東京ではもう暮らせねえしな」
一人、手紙を書いて繁は小松へいく。
「あんちゃん、じゃあな」
「気をつけろよ」
蒸気機関車の煙とともに繁は雪の大地へと行く。

第15章歓迎
「こんにちは」
「繁といいます、よろしくお願いします」
「たいへんだったな」
「まあ、ゆっくりしてきな」
疎開といってももうそういう年ではない。
「繁は飲めるのか」
「そんなには飲めないです」
「きょうは歓迎会か」
「ひさしぶりにアンちゃん達もよぶか」
しばらくするとぞろぞろ
いとこたちが来た。
本家は農家だがいとこは皆お金持ちだった。
「繁か」
「大きくなったな」
叔父の文太郎だ。
叔父の家ものかだが、従弟は大学に行って
今は家に帰っていた。
「繁か」
「いくつになった」
「20です」
「お兄さんは今どこの学校にいっているんですか」
「帝大だよ」
「東大ですか」
「なかなかいけないよ」
繁は内心悔しかった。
家がちゃんとしていたら、俺だってこんなんじゃなかった。
印刷工場のお坊ちゃんのはずだった。

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